「損をさせない」という選択
前職では畑違いの業界で十数年、営業の仕事をしていました。お客様の使用用途を伺い、自社の商品が合わないと感じた時は、正直に競合他社の商品をお薦めすることもありました。「その使い方でしたら、◯◯さんのこちらの商品の方が合うと思いますよ」と。
黙って自社の商品を売ることもできたのですが、お客様に損をさせたくなかったんです。
遠回りが、信頼になる
その場ではお客様は他社の商品を選ばれます。ただ、何かあるたびに「相談していいですか」と連絡をくださるようになりました。おそらく「この人に聞けば悪いようにはしないだろう」と思っていただけたのだと思います。そして本当に用途に合うと判断した時に自社の商品をお薦めすると、値段も聞かずに注文してくださることが何度もありました。
ただ、会社にはこのやり方が理解されず、外回りの営業でありながら4年間内勤に回された時期もありました。正直、腐っていた時期です。
一本の電話から始まったこと
それでも、一本の電話がきっかけで状況が変わりました。
ある遠方のお客様のクレーム対応で、電話とFAXだけのやり取りをしていたら「なぜ来ないのか」とお怒りでした。
もう退職も考えていましたので、今の恥ずかしい立場を洗いざらい話した上で、「今回の不具合は色んな角度から見て、うちの商品の問題だとは考えにくいんです」と話し、不具合の原因と代替案を資料と共にお伝えしたところ、「代わりのやつ、試してみますわ」とご注文をいただいたのです。
後にその商品は先方の装置図面に正式に組み込まれ、単価も以前より高いものでした。
賞与などの評価には結びつきませんでしたが、お客様が自分を信頼してくださったこと、それだけで十分でした。
今、お客様と向き合う時、この経験も土台になっています。まずお客様にとって本当に必要なものは何かを考える。
遠回りに見えても、それが結局は信頼につながると思っています。